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泡のように
第35章 34.
こんなかたちで私の名前を何度も呼ぶなら、もっと違う形で呼んでくれたらよかったのではないだろうか?
こんなに電話してくるなら、もっと違う形で電話をくれたらよかったのではないだろうか?
こんなに私に執着するくらいなら、最初からその執着心を貫き通せばよかったのではないだろうか?
(おい、いるんだろ?)
私の心を揺らさないくらい、強い精神力で。
(智恵子!開けろ。いるのは分かってんだぞ)
それが執着心だと気付かせないくらいの情熱で。
(智恵子!おい、智恵子!)
それが、イカレてるとも気付かないくらいの欲望で。
「わかってるよ。お兄ちゃん」
鍵の回る音ののち、水を打ったような静寂が橙色を包んだ。
ふわっと室内に入り込む秋のそよ風と。
相変わらず、陰気な表情でいる、お兄ちゃんの眼差しと共に。
こんなに電話してくるなら、もっと違う形で電話をくれたらよかったのではないだろうか?
こんなに私に執着するくらいなら、最初からその執着心を貫き通せばよかったのではないだろうか?
(おい、いるんだろ?)
私の心を揺らさないくらい、強い精神力で。
(智恵子!開けろ。いるのは分かってんだぞ)
それが執着心だと気付かせないくらいの情熱で。
(智恵子!おい、智恵子!)
それが、イカレてるとも気付かないくらいの欲望で。
「わかってるよ。お兄ちゃん」
鍵の回る音ののち、水を打ったような静寂が橙色を包んだ。
ふわっと室内に入り込む秋のそよ風と。
相変わらず、陰気な表情でいる、お兄ちゃんの眼差しと共に。

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