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泡のように
第10章 9.

やっぱり、お兄ちゃんはフツウのキョウダイぶったお兄ちゃんのままだった。
「じゃ、じゃあな。早く帰りなよ」
「ちょっと待って」
キョドキョド私から離れようとするお兄ちゃんを呼び止めた。
「連絡先教えてよ」
キョウダイなのに互いのケータイ番号すら知らないのは致命的だ。
「教えてくれたら、今度はちゃんと連絡するから」
お兄ちゃんはしばらく目を泳がせつつ国公立大学卒の脳で考えて、ハーフパンツのポケットからケータイを取り出した。
無論ガラケーだ。
「に、兄ちゃんの長いから、智恵子のを教えて」
恐らく登録時そのままの意味不明な英数字羅列アドレスのまま変更していないのだろう。
お兄ちゃんはザク、それも量産型と同じ色の見るからに古い機種の画面を睨みつけている。
お兄ちゃんは昔からザクが好きだ。
兄ちゃんはどうせどれだけ頑張ってもガンダムには乗れない、所詮量産型止まりのパイロットなんだよフッみたいなことを昔言っていた気がする。お兄ちゃんが量産型パイロットなら私はザクにあっけなく踏み潰される歩兵だ。いいや、爆破に巻き込まれて臨終するフラウ・ボウの両親と共にいた名もセリフもなき一般人レベル以下だろう。
打ち込みすら遅いお兄ちゃんの代わりにアドレスを登録してあげる。
「あ、あとで、メールするから、兄ちゃんのはそれで、じゃ、じゃあ」
まるで嫌いな同級生と別れるかの如くお兄ちゃんは振り向きもせず、ケータイをポケットの中に突っ込みながら行ってしまった。
いや、もしかしたら本当に嫌われているのかもしれない。
大型書店の中に消えようとする大きな背中。
人混みに混じっていく背中。
熟睡する私を抱いた背中。
昔暗がりの中で腕を回した背中。
どうしようもなく、好きでたまらない、背中。
私の中の大多数を占める自分が、私を無意識に叫ばせた。
「私は今でも好きだよお兄ちゃん!」
って具合に。
「じゃ、じゃあな。早く帰りなよ」
「ちょっと待って」
キョドキョド私から離れようとするお兄ちゃんを呼び止めた。
「連絡先教えてよ」
キョウダイなのに互いのケータイ番号すら知らないのは致命的だ。
「教えてくれたら、今度はちゃんと連絡するから」
お兄ちゃんはしばらく目を泳がせつつ国公立大学卒の脳で考えて、ハーフパンツのポケットからケータイを取り出した。
無論ガラケーだ。
「に、兄ちゃんの長いから、智恵子のを教えて」
恐らく登録時そのままの意味不明な英数字羅列アドレスのまま変更していないのだろう。
お兄ちゃんはザク、それも量産型と同じ色の見るからに古い機種の画面を睨みつけている。
お兄ちゃんは昔からザクが好きだ。
兄ちゃんはどうせどれだけ頑張ってもガンダムには乗れない、所詮量産型止まりのパイロットなんだよフッみたいなことを昔言っていた気がする。お兄ちゃんが量産型パイロットなら私はザクにあっけなく踏み潰される歩兵だ。いいや、爆破に巻き込まれて臨終するフラウ・ボウの両親と共にいた名もセリフもなき一般人レベル以下だろう。
打ち込みすら遅いお兄ちゃんの代わりにアドレスを登録してあげる。
「あ、あとで、メールするから、兄ちゃんのはそれで、じゃ、じゃあ」
まるで嫌いな同級生と別れるかの如くお兄ちゃんは振り向きもせず、ケータイをポケットの中に突っ込みながら行ってしまった。
いや、もしかしたら本当に嫌われているのかもしれない。
大型書店の中に消えようとする大きな背中。
人混みに混じっていく背中。
熟睡する私を抱いた背中。
昔暗がりの中で腕を回した背中。
どうしようもなく、好きでたまらない、背中。
私の中の大多数を占める自分が、私を無意識に叫ばせた。
「私は今でも好きだよお兄ちゃん!」
って具合に。

