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第19章 太いのが好き／細くても好き

　やがて可美村クンの食事も終わってしまい、最後の時間となります。
　箸が置かれる「カチリ」という音がその合図のようでした。

　「じゃあ…」
　
　私は可美村クンにもたせ掛けていた身を起こして見つめるように彼のほうに顔を向けました。

　「はい…」

　5秒ほどのあいだ見つめあった後、もうこれ以上期待はできない、とそう思って私は彼のほうに背中を向け立ち上がりかけました。

　その時！可美村クンは後ろから私のことを抱きしめてきたのです。

　彼は私の両腕ごと、ぎゅっと強く抱きしめてくれて、そして言いました。

　「もう少しだけ…ここにいませんか。」

　「…だって…けじめなんでしょ…」
　「そうです。そうですけど…食休みっていうか、そういう時間がもう少しあってもいいかなって…」

　食休み！

　私は思わず笑い出しそうになりました。

　「あはっ、馬鹿。馬鹿ねっ！」

　そういって私は可美村クンの手のひら上に自分の手を乗せます。

　「馬鹿ですか。」

　そう聞かれて、私はもう一度同じことを言いました。
　でもその顔は涙を滲ませながら、喜びに溢れていたはずです。