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§ 龍王の巫女姫 §
第11章 残酷な好機

炎嗣に抱き寄せられた水鈴は、燭台を捨て自由になった両手を彼の肩に置いた。

その手で彼にしがみついた。


別に彼女だって死にたくなどないのだ。


けれど自分だけが目的もなく悠々と生きるなど…神が許してくれると思えなかったのだ。

哀しい現実から逃げ出す手段を、他に思い付かなかったのだ。




「……う…ひっ、く…うう…」


「死ぬことは許さない…絶対に」


逞しい胸に受け止められ、労るように髪を撫でられると、おさまりかけていた涙が再び溢れだす。


炎嗣の上衣を彼女が引っ張るものだから、衿がはだけて包帯を巻いた身体が露になった。


水鈴はそこに濡れた鼻面を押し付けて泣いた。



「逃げることも許さない。これが──…八年前に俺が犯した大罪への、せめてもの償いだ」


「…ぅ…う…、ふ…っ」


声をあげて泣きじゃくった。

…幼子のように。



夜のしじまに、その泣き声は零れ続けた。




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