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§ 龍王の巫女姫 §
第16章 淡く儚く 愛おしく


「このままだと貴女は…──」

顎に添えていた彼の指がつたい下り、襦の衿を引っ張る。

「…ッ…花仙?」

「……」

胸元が現れ乱れた襦…

花仙は、はっとした様子で口付けを止めた。



木の幹との間に彼女を閉じ込めていた…その手を下ろして、身体をひく。


「……ぁ」

離れてゆく彼を切なく感じた。



「──…水鈴様」

「……」

「私の手には、もう、貴女を愛しむ権利がない」

「 ッ…どうしてですか?」


「…、私の手は…──っ」


花仙は躊躇っていた。

言うべきか、黙っておくか…

一瞬の躊躇いを見せた後、彼は改めて息を整えてから口を開いた。



「…私の手は罪に染まっている」


「…ハァ…」


「血濡れている…─その意味が、お分かりですか」




──…血


それは…



「…わ、わかりません…!!」


頭を満たしていた甘い感覚はあっという間に影を潜めた。水鈴は、必死に首を横に振った。



「何のことか全くわかりません…っ」

「…なら、教えます」

「…いらないッ 嫌だ…聞きたくありません…!!」


言わないで

それ以上は言わないで。

言わなくていいから…その代わり、あなたの唇でわたしを溶かして。



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