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忘れられない指
第3章 恋のすすめ
「孝明もう来てたのか。
 おっ!咲子ちゃんひっさしぶりじゃん!忙しかったの?」

威勢のいいかけ声はすぐに私の耳の側に近づいてきた。
隣りの椅子を引いたのは凌空。
その隣に史彦が座った。


まずはマスターにビールを注文してから凌空は私に体を向けた。

「オレとは2週間ぶり?」

「そう、先週は来られなかったから・・そうだね2週間ぶり。
 史彦さんは帰りに駅でばったり会ったよね、先週」

凌空の向こう側から首をのぞかして史彦がうなずく。
先週の金曜日、終電から放り出されるようにホームに降り立つと、
隣りの車両から降りてきた史彦を見つけて声をかけた。
その時はお互いに疲れ切っていて、
駅近くのコンビニでそれぞれ買い物したところで別れた。

「ずいぶん疲れてたけど、仕事忙しかったの?」

史彦の問いに頭を大きく縦に振った。

「先週はピークだったんだよね、おとといからの展示会の準備でさぁ。一週間毎日終電!」

手にしたピザトーストが程よく冷めたとこで、大きく開けた口の中に押し込んだ。

「でもさ・・」

口の中をもぐもぐさせながら3人の顔を順繰りに見回す。

「この仕事楽しいし誇りを持てるからさ、
 忙しい時はすっごい疲れるけど、やりがいあるからがんばれるんだぁ」
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