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忘れられない指
第5章 思いもよらぬ・・
約束の土曜日がきた。

昼近くにベッドから這い出て、トーストとヨーグルトという
朝食メニューで軽く食事を済ませてから、
スーパーへ買い出しに出かけた。

今夜、凌空の部屋でのホームパーティーに持っていく
料理の材料を買うために。

一応自炊しているのだから、得意料理の一つや二つ、ある。
ラタトゥイユとハンバーグ。
食べやすさを考えて煮込みハンバーグを作ることにした。


買い物を終えてアパートに戻るとすぐに料理に取り掛かる。
誰かのために作る料理、なんて何年振りだろう。


学生の頃、彼氏がいた。
同じ学校の別の科の先輩。
お互い実家を離れて1人暮らしだったから、よく部屋を行き来したものだった。
学生だったし、彼もどちらかというと2人だけの空間でのんびりしたい派だったので、
質素ながらも手料理を作りあって食べたものだ。

結局、彼の方が1年先に就職したことで生活が変わり、
仕事の忙しさと、そして他の女へ気が移って、別れて、いやフラれてしまった。

それ以来、誰かの、男のために料理を作ることはなくなった。
今日久しぶりに男達のために料理を作る。
美味しいって、褒めてもらえたらうれしいな・・
3人の顔を思い浮かべながら、手の中でハンバーグを往復させた。
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