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忘れられない指
第8章 確かめたい、互いの心・・
「さあ、どうぞあがって」

彼を先に部屋に上げ、私はドアをロックした。
この前の夜に聞いたよりは乾いた音。
心の中に尾を引いて響く音・・

「そうだ、孝明さんご飯は?」

「え?ああ、実はまだ食べてないんだ。 
 定食屋で食べてから行こうかなって思ってたから」

「じゃあ、よかったら食べてって!チャーハンくらいしかできないけど。
 私もまだ食べてないの、ちょうどよかった!」

孝明の返事を待たずに私は冷蔵庫を何度も開け閉めしながら
冷凍してあったご飯やら、ネギや卵やハムを取り出し、
最後に2本だけ残っていた缶ビールの1本を取り出して孝明の前に置いた。

少しでも長く、彼をこの部屋に引き留めておきたかった。
一緒にいる時間を・・作りたかった。

「それ飲んで待ってて。すぐできるから」

さっそく具材を刻み始める。
男の視線を背中に受けながら、小気味よい包丁の音を響かせる。
男のために、それも孝明だけのために料理を作る。
女の幸せって、こういう時に感じるのかな・・
手元にむかって微笑んだ。

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