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泣かない!
第2章 ChaosHero.1
*健史*
「な、なんだテメェ!? しゃ、借金は返しただろぉがぁ!!」
綾子に先輩と呼ばれた男は裏社会ではカオスと恐れられ、依頼者からはヒーローと敬称される。彼は健史の部屋に来ていた。健史は22歳、そして既に別の30代の女と同棲していた。
「この書類にサインしろ。すれば硫酸の目薬で苦しんだ後に介錯してやる。拒否すれば他の方法で金を搾り取る」
「一体なんの話よぉ」
新しい女が騒ぎ立てる。
「コイツは前の女の慰謝料が払えないから死亡保険で払う。殺人でもおりる保険だッ」
―-パンッ
「ぎゃぁぁぁぁ!!!!」
「ひぃぃぃぃ」
女は血相を変えて部屋から飛び出す。カオスが拳銃で健史の耳を吹き飛ばしたのだ。
「パチンコの収入だけで暮らせたヤツがこの世にいんのかよ?」
「い、イカれてる!!」
「サインしろ」
健史はサインを書いた瞬間―-
「ひぎゃぁぁぁぁぁ!!」
片目の中に硫酸を垂らしたのだ。
「洗い流すか?」
健史は水道に走った。勢いよく水道水で洗うのだが―-
「うぎゃぁぁぁああぁぁぁ!!」
「いい鳴き声だ……もう片方の目にもされたくなきゃこのまま自首しろ。千鶴にDVしたってな」
彼が自首すれば死刑になる。それでも保険はおりる。そして、事後たる自首であれば千鶴は暴力を受けた時に警察に相談していなくても、彼女は罪に問われない。
―-パンッパンッパンッ
さらに太腿に三発の銃弾を撃ちこんだ。
「どぅえぇぇぇぇぇ!!」
「その弾丸には魔力が込められてる。一週間後にお前が地獄踊りをしなかった場合でも36時間後に地獄の毒に苦しんで窒息死する」
お前が地獄踊りをすれば、その高額な傍観席の売り上げは千鶴の懐に戻る。服役中に突然死しても保険はおりる。

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