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先生、早く縛って
第9章 偽りのキス

今、俺の腕の中で舌を絡め合わせながらうっとりとした顔をしている……柏木沙也加。彼女がこの理科準備室の扉に作った覗き穴が、ゆっくり外から元に戻されるのが見えた。

結衣……それでいい。
お前まで巻き込まれる必要は無い。

それでいいはずなのに……あいつの泣き顔が見えた気がして、俺の心は少しだけ痛んだ。

心が痛む……か。お前にもまだそんな心があったのかと、もう一人の俺が自嘲気味に嗤う。

それにしても柏木があんな仕掛けをしているとは……迂闊だったな。

以前、彼女から告白されたことは覚えている。他の生徒とは違い、はっきりと退けた後も何かと接近してくることも……

でもだからと言って、扉にあのような仕掛けを作り、見張るような真似が許される理由はどこにもない。

一体どういうつもりなんだ? その上、こんな風に脅迫まがいのことまでして……

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