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秘蜜に濡れて
第12章 曖昧な予感
指先が産み出すゆるゆるとした快感にだけ気を遣っていたあいりにはドアがゆっくりと開けられていく事に気付けるはずもなかった。

あいりが自分のベッドの上で、自分の名前を呼びながら、痴態に塗れている。

黒のストッキングを纏い、スカートをずり上げてもぞもぞと蠢く脚が一層淫らだった。

最終の飛行機に飛び乗って、一抹の期待を抱きながら鍵を開け、玄関にその人のパンプスが並んでいた時の喜びをどう表せばいいのか。

そして愛しいその人が…目の前で自分を求めている現実。

ずっと見ていたい。

今すぐ触れたい。

葛藤する感情が意に反するように足を留めていた。

くちゅ…その音が確かに耳に届いた。

「あいり」

我慢仕切れなくなって名前を呼んでしまう。

途端に襲う後悔と、煽情的な期待。

ビクッと反応した身体と同時に反射的に手をそこから抜き、半身を起こした。

ぴっと何かが引っ掛かったような微かな音。

「は…つはる、さ…なっ……で…いつ、から…?」

上手く言葉が出てこないほど驚かせてしまった事は後で反省しよう。
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