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秘蜜に濡れて
第1章 今宵、星が零れたら。
「もう帰っちゃうの?」

この人もなんて透き通る声を持っているんだろう。

あいりはそう感じながらも、黙って頷いた。

「あいり!」

その人の背後から圭吾が駆け寄って来た。

「悪い、もう終わった、って挨拶したのか?」

圭吾が二人を交互に見て口にしたそれに、あいりは首を傾げた。

「来週のCMキャラクターを務める9secondの秋月 竜と伊坂 撥春だよ」

「よろしくね」

ひらひらと手を振ってみせる竜。

「圭吾、その子もう帰らせるの?」

「挨拶もしたし、また来週な」

「撮影の時その子も来る?」

「担当だしな」

竜はニヤリと笑うと店の中から呼ばれて踵を返した。

「もう来ないかと思った、会えて良かった」

「仕事が押してね、来週よろしく」

圭吾は頷いて撥春の肩を叩いた。

「鞄取ってくるわ」

あいりが頷くと圭吾はフロントへと戻って行く。

シャープな顎のライン、精悍で綺麗な横顔を見つめずにはいられない。

と、視線に気付かれて目が合ってしまった。

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