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鈴(REI)~その先にあるものは~
第2章 友の悲劇~無明~
   友の悲劇
  ~無明~

 その朝、お亀は井戸端に立った瞬間、厭な予感に囚われた。既に卯月に入り、桜も咲く時季になってはいたものの、井戸端には遅咲きの椿が一輪、紅い花をつけていた。
 何故だか、この花を見る度、お亀は普段は遠く離れて暮らす友を思い出すのだった。お亀が暮らすのは、親友お香代と同じ木檜藩とはいえ、お香代が良人と暮らす城下よりはるかに遠く、森一つを隔てた小さな村だった。
 この椿は特に遅く咲く品種というわけではない。椿は年が改まってからすぐに咲き始め、更には桜が満開になる春の盛りまで非常に花期が長いのが特徴的だ。
 紅い艶やかな紅色の花は、お香代のふっくらとした形の良い唇のようで、紅い花をつける樹と並んで咲く一方の白い花をつける樹―、この純白の花は、お香代の透き通る膚のよう。
 この美しい親友を、お亀はもうずっと以前から何より自慢の種にしている。お亀の伯父は柳井幹之進といって、ご城下で町道場を経営する道場主として知られていた。二十年前の御前試合では見事、先代のお殿さまの御前で並み居る挑戦者たちをよそに優勝するという輝かしい戦績をおさめた。
 そのときの戦(いくさ)神(がみ)のごとき闘いぶりは今も伝説のように語られていて、幹之進が優勝者に与えられるすべての栄誉―多額の報奨金や藩主の武芸指南役への推挙をすべて断ったということもあいまって、その人柄の清廉潔白さと共に勇猛果敢ぶりは当の幹之進が亡くなってもなお真しやかに噂となって囁かれている。
 お亀の母おつるが幹之進の六つ違いの妹で、この村長(むらおさ)の許に嫁いできたのがもう二十八年も前の昔のことになる。母と父の間には十年もの間、子が授からず、十年目になってやっと生まれたのがお亀であった。母よりひと回り年上だった父は甥―弟の伜に村長を譲り、既に数年前にみまかった。母も父の後を追うように二年前に旅立って、今は一人暮らしだ。
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