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夢を見るころ
第1章 ゆ
座った二人に俺は何も言えず
ただ篠塚さんをにらみつけてる夢が爆発しないことを祈った。

「夢が始めたんだからな」

篠塚さんが頬杖をついて片眉をわずかに上げながら『夢』と呼んだが
夢は他の事に夢中で気が付いていない。

「何もここまでしなくても」
「あの子に言った時点でアウト。翌日には広まってるよ」

確かに。

「付き合うわ。付き合えばいいんでしょう?」
夢の投げやりな態度にも
満足そうに篠塚さんは笑っただけだった。

「でも条件があるわ。篠塚さんから電話は一切しないで。
私は仕事が忙しいし不規則よ。
電話に煩わされたくないわ。そっちの時間は想像がつくから
私から電話するわ」
「なるほど」

「メールをくれても返事は期待しないで」
「それから?」
「とにかく、普通の会社員と生活リズムが違うことだけ覚えてて」
「わかった」

夢もすげぇ・・・
ここまで「自分」を押し通すか?

「セックスなんだけど」
「ストップ!」

夢の言葉を篠塚さんが遮った。

「その話は楠の前でしたくないな」

夢が冷めた顔で俺を見つめた。
「そうね」
「だろ。じゃぁ、細かい話は明日しようか?」
「あんたバカ?こんな時間に3日も連続で出られるわけないでしょう?」
「そうか」

篠塚主任をバカ扱い・・・・

「駿、あんた向こうで飲んできなさい」
「え?」
「そうしたら篠塚さんと二人で話ができるわ」
「でも」

「そうしてくれ。楠。今日はありがとう」

俺はそれ以上何も言えなくてその席を立った。
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