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Love adventure
第69章 Marry Me④
 野村は、あぐりをぎゅっと強く抱き締め、囁いた。

「心配で……放って置けないよ」
「私……まだ稲川さんがっ……」
「知ってるよ」

 あぐりは、涙で彼の胸を濡らし、首を振った。

「稲川さんのことを……一番……っ」
「それも分かってる」
「――っ」
「あぐりみたいな女は、俺と別れてもまた何処かで男に引っ掛かって、泣く事になるんだよ……
 そんな風になるのが分かってて、このまま離せない」
「……ひ、酷い言い方……!
 でも……そうならない自信も無いかも……」
「ハハハ……だろ?」

 野村は、あぐりの顔を両手で挟み、額を付け合ったまま優しく見つめ、静かに言った。

「――俺と、結婚しようよ」
「野村君――」
「今は無理でも……この先はわからないじゃない?
 ……待つから」
「そんな事言われたって……一生無理かも知れないわよ?」
「そしたら、天国で結婚しよう」
「へっ?」

 野村は悪戯な色を瞳に浮かべた。

「いや、地獄だったりして」
「ちょっと――!縁起でもない……んっ」

 あぐりが手を振り上げると、手首を掴まれ唇を塞がれる。
 思わず顎に頭突きをしてしまい、野村は弾みで倒れてしまった。


「もうっ……油断も隙もないんだからっ!」

 そのまま放って部屋に入ろうと思ったが可哀想になり、あぐりは野村の大きな身体を

「――ふんぬっ」

 と気合いを入れて起し、塀にもたせかけた。
 彼の指が、あぐりの手をギュッと握ったが、まだ気を失っている。
 あぐりは、つい笑いを溢してしまった。

「ありがとう野村君……
 でも、ごめんね……」






 

 そして、あぐりはその日、東京を去った。



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