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好きにさせて
第16章 現実
said おかん


「茜ちゃんごめんね?」


「え?」


「お父さんが
色々質問したりして」



「いえ
知ってていただいた方が
いいことばかりなので
大丈夫です。
私は…全部
知っててもらいたいので」


尚樹がつれてきたんやから
ええ子なんやろう

そやのに
子供ができんとか
一人っ子やとか
母親がもうおらんとか
そんなことで
後ろめたさ感じて…

かわいそうに

手慣れた手つきで
お茶を入れる茜ちゃんを見てると
私は昔の自分を少し思い出していた


この子と尚樹が結婚したら
そりゃあ
心配も多いやろう
けど
この子に罪はないのに…


「茜ちゃん?」


「はい」


「病気のこと
尚樹から聞いたんよ」


「あ…はい」


「大変やったねぇ」


「…はい。
あ、あの…」


「ん?」


「…すみません…
私みたいなのが
挨拶に来たりして…」


「何言うてんの。
そんな思うてないんよ?」


「でも…」


私は
茜ちゃんの手を休ませて
話を続けた


「私こそ
尚樹一人しか産まへんかって
ごめんね」


「そんな!
一人でも素晴らしいことです」


「ありがとう。
けどね、もう一人産みとうても
産まれへんかったから
ほんの少しだけやけどな
茜ちゃんの気持ち分かるんよ」


「え?」


「尚樹の前に
一回流産しててね
正確に言うと死産で
お腹の中で亡くなっててね…。
尚樹も帝王切開やったりして
次はもう
産めませんて
病院の先生に言われてなぁ…」


「……」


「せやから
茜ちゃんを攻める気なんて
ないんよ?

ただ、お父さんも私も
突然色々考えなあかんことが
増えて戸惑うてるだけ。

お父さんが
茜ちゃんに色々聞くんも
考えなあかんことのために
聞いてるだけなんよ?
許してやってな?」



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