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好きにさせて
第16章 現実


玄関のドアが閉まり
俺と茜が顔を見合わると
二人して
ふーーっと息を吐き
クスクスと笑いはじめた


お互い
『結婚』
という取り決めに
以前のような
わだかまりが無くなったからか
初めての顔合わせのわりに
心は軽かった


「よう喋るおかんでごめんな?」


「ううん。
明るくて素敵なお母さんね。
お喋りしてくれて
助かったよ」


「ほんまか?」


「ほんまに(笑)」


「なぁ」


「ん?」


「まだちょっと時間早いし
動物園行かへんか?」


「動物園?」


「前にイルミネーション
ゆっくり見られへんかったやろ?
せやから行かへんか?
今から」


「うん!行く!」


久しぶりに明るく笑う茜に
ホッとしながら
俺は茜を助手席に乗せ
ハンドルを握った


「ほな、行くで」


「うん」


動物園に誘うたんは
突然思いついたわけやない

誘うた理由も
イルミネーションを
見るためだけやない


ほんまは

茜に
あることを告げるためなんや



それから


茜に
聞いておきたいことも
ある


「今日はお天気いいから
ゆっくりイルミネーション
見られるね。
楽しみだな…」


「…せやな」


何も知らず
機嫌よう
俺の隣で外の景色を
見てる茜と違うて
俺はちょっと緊張しながら
運転を続けた
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