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星と僕たちのあいだに
第10章 揺らぐ鬼火
 

『確かに、多感な年頃の娘さんと
 新しい伴侶が良好な人間関係を築けるか、
 という不安はあるかもしれませんね。

 でも、それだけじゃないと思いますよ。
 お父様の知人や友人のなかには
 亡くなったお母様をよく知る人もいるでしょう。
 再婚相手からするとそのあたりのことって、
 何かにつけ扱いにくい事柄でしょうから。

 再婚にメリットを見出せなかった、
 お父様のお気持ちが解るような気がします。
 篠原さんと奥様への愛情を超えなかった。
 そういうことなんだと思います』

あちゃぁ、俺は何を言ってるんだ。
いかにも純潔ぶったことを言ってしまったと滝沢は胸のうちをもやつかせた。

『滝沢さんも同じですか?
 再婚を考えるような方は
 いらっしゃらなかった?』

『あ、ええ。考えるには考えましたが、
 今までは日々生活に追われて
 それどころじゃなかった、
 っていうのが正直なところです。
 再婚の話もあったんですけど、
 肝心の直樹が
 相手の女性に全く心を開かなくて、
 いつの間にか立ち消えてしまいました。

 なにか波長のようなものがあって、
 それが直樹と合わないんでしょうね。
 どうも直樹は敏感なようなんです』

滝沢はあきらめたふうな表情で微笑んだが、悔いる様子はない。

麻衣は無言のまま深くうなずいて、内心ひそかに歓びを噛みしめていた。
自分の胸元で心地よさそうに安心している直樹は、誰にでもそうなるのでなく、心を許す相手を選んでいる。
直樹が持つ数少ないチャンネルのひとつが、自分に割り当てられていることが麻衣を嬉しくさせたのだった。

思わず直樹の額に頬を当てた。
可愛くてしかたない。


 
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