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星と僕たちのあいだに
第3章 星のすぐそばに
 
第三章 星のすぐそばに



土曜の早朝――――――
圭司が目覚めたのは五時だった。
甘い香りに誘われるようにベッドを出、肌寒いリビングからキッチンをのぞくと、麻衣がコンロの前で味噌汁の味加減をみていた。

リビングのテーブルには、玉子焼き、きゅうりを刻んだ酢のもの、納豆、白菜の漬物、と盆に並んだそれぞれの小鉢にはラップをかけてあって、早苗と渡瀬の分まで配膳してある。
「ご飯は土鍋、おミソ汁は火にかけてください」とメモが添えてあった。
それを見て圭司は胸を熱くした。

『おはよ、朝からごちそうだね』
 
圭司に気づいた麻衣は『おはようございます』と幾分早口であいさつすると、小鉢をならべた盆を圭司に持たせ、最後に焼きたてのアジを一匹、皿に乗せた。
きのう麻衣が鮮魚売り場で品定めしていたものだ。

『ごはんとお味噌汁は
 私が持っていきます』

麻衣はにこりと笑うと、再びキッチンをせわしなく動いた。
ミディアムボブはすでに整い、メイクも済ませてある。

こうするのがいちばんというように、てきぱきと台所仕事に精をだす麻衣をあてなく眺めながら、圭司は、そこまでしなくていいんだよ、と言いかけてやめた。
麻衣がしたいことをやればいい。
そうしたことが、いったん崩れた麻衣の「カタチ」を造っていくにちがいない、と思ったからだった。

湯気立ったご飯茶わんとみそ汁が並び、二人は向かい合って手をあわせた。

『いただきます』

というや、圭司はみそ汁をすすり、ガツガツと白飯をかき込んだ。
麻衣は嬉しくて仕方ないといった顔をして、圭司の食べっぷりをじっと見ている。

圭司は麻衣の視線に気づいていたが、あえて目を合わさずにあさげの完食を目指した。
目が合えば『俺の嫁になってくれ』と、深い考えもなく言ってしまいそうなのである。



 
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