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第2章 カテリナ・ラ=フェール

　王都ファリスの郊外に広がる穏やかな田園風景。陽射しもまばゆい麗らかな春の空。そんなのんびりとした風景に似つかわしくない悲痛な叫びが急を告げる。

「野盗だッ！　野盗の襲撃だあ！」
「女、子供は家の中に隠れろっ」

　戦乱は敗残兵や脱走兵を生む、或いは故郷を戦火に焼かれた食い詰め者を。

　そのような者達が、生きるために野盗や追剥ぎとなって更なる不幸の犠牲者を増やす。

　条約の上では終結こそすれども、現実を生きる民たちにとって戦争はまだ終っていなかった。

「村ぁ焼かれたくなけりゃ、食い物をよこしなあっ！」
「有り金も全部だっ！」
「そ、それに女っ！　女も差し出せやあっ！」

　口々に欲望を喚き散らし、襲撃者達が村へと雪崩れ込む。失う物がない者達が、まだわずかばりの失えぬ物を持った者達を襲う。

　タタタタタターン！

　突如、銃声が鳴り響いた。野盗の一団が算を乱す。

「なっ……なんだあっ？」