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第12章 春の嵐

“ 春菜。 俺、結婚するんだ ”


……今から６年前の３月

卒業式当日、桜の蕾が大きく膨らむ頃

空間デザイン科全体の、卒業パーティーで

“ 春菜に１番最初に伝えたかった ” と

桜色の華を胸に飾った遼くんは、優しい笑顔でそう言った。


当時、大学２年を無事終えようとしていた私は

秘めていた想いを、遼くんに告白しようと決心していて


……だから

私の次に報告を受けた教授が、みんなの前で報告しろよって、満面の笑みで促して

遼くんが講堂のステージに上がって、マイクを握った時も

ただただ、呆然としてしまって

驚きすぎて、涙さえ出なかった。



“ これからの人生を共に歩み、守りたい人がいて
入社を機に、結婚します ”



周りの皆から、歓声と祝福の拍手が贈られる中


……おめでとうって言葉は


最後まで言えなかったんだ。