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春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第17章 約束

「……どうして、あんたが泣くの」


そう言って苦笑しながら、ポケットに手を突っ込んでハンカチを探す。

……って、さっき春ちゃんに渡しちゃったんだっけ。


「それだけ盛りメイクしてるんだから、泣けばどうなるか分かるだろ?」

「………」

「マスカラ落ちて、目の下が…」

「どうして、あなたは泣かないの?」


デスクの上のボックスティッシュに、俺が手を伸ばしたけど

竹中さんは溢れる涙を拭う仕草も見せず、震える声で続けた。



「……誰1人として、悪くないじゃない。
加賀谷くんも、奥さんも……春菜ちゃんも、あなたも」

「………」

「何が正解か、神様だってきっと分からないけど
全員が笑って幸せになるには、どうしたらいいの……」



独り言のように、呟いた彼女。

ゆっくりとイスを回すと、俺を真っ直ぐ見つめた。



「こんなこと、私が言えた立場では無いけど……」


「………」


「……早乙女くん。
あなたも、泣いていいのよ……」



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