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透明犯罪捜査官 美荻野凛々香の非日常
第4章 ―円拓の非日常―

To:瑠偉人
Title:心配してるよ
Message:




 入力欄にはカーソルが点滅したままとなっている。ベッドの中でメールを打ちかけの携帯を握りしめて、凛々香は眠りに落ちていた。設定されていたライティングタイムが過ぎ、画面の明かりがフッと消える。寝室は暗闇に包まれた。

 静寂。

 凛々香の微かな寝息だけが部屋に響く。と、寝室の隣の凛々香の私室に繋がるドアが、ひとりでにノブを下ろし、音もなく開いてゆく。まるで誰かが物音を立てないよう細心の注意を払って扉を開けているようだ。だが、人の姿はどこにもない。人が一人、ギリギリすり抜けられる分だけ開くと、今度はまた同じようにして静かに閉じる。

 ヴ……ン

 綺麗に整頓された凛々香の机の上で、パソコンが勝手に起動し、ディスプレイに光が灯る。更に、机の引き出しが静かに、だが、次々と飛び出してゆく。

 明らかに透明人間の仕業だった。

 凛々香の部屋に忍び込んでいるのは誰か?

 自衛隊特殊工作部隊所属、円拓。それが彼の肩書と名前だった。

 日中から、いや、もうすでにここ数日、彼はずっと凛々香への密着監視を続けていた。支給された透明ドラッグを使い、姿を隠して。

 それが彼の任務だったからだ。
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