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第4章 海ノ魚

「もしかして…彼氏と喧嘩して飛び出して来たとか？」

「……あ、いや」



私をからかうように笑いながら冗談を言ってくる桜木さんだが…

…的確過ぎて笑うに笑えない冗談だ。

でも、本当の事なんて言えないし、帰れそうにないし。


「……もしかして、図星だった？」

「あ、あの…っ」

「ごめん…、冗談のつもりだったんだけど…」

「い、いえっ、桜木が謝る事じゃ…」


冗談だっていうのはわかってるが、的を得すぎて笑えなかった。

喧嘩だけならまだしも破局したなんてさすがに言えない。

私の落ち込む顔を見て桜木さんの足が止まった。


「よかったらちょっと話さない？コーヒー奢るよ」

「そんな…、悪いですよっ！」

私の話を聞いてくれようとジョギングを中断してポケットから小銭を取りだし自販機の方へ歩いていく。

さすがにそれは悪いと思ったが…。

「いいからいいから。相沢さんにはいろいろ話したい事があったから」

そう言って自販機でホットコーヒーを買ってくれた桜木さん。

私の方へポンッと温かな缶コーヒーを投げ渡してくれた。

「私に話、ですか？」

「うん。あっちの公園で話そうよ」

桜木さんが指差した方に見えた公園。



……あの公園って、私とハルちゃんが再会した公園だ。




「……はい」

桜木さんも温かな缶コーヒーを購入して私と共に公園のベンチへと向かった。

冷えきった体に流れ込む温かなコーヒーが、一気に全身を温めてくれた。