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第16章 応えすぎる心

まるで子供が自慢のオモチャを披露するように早く読めと急かす高梨に可愛さを覚えてしまう。
内容は一人の女性が生きる意味を失った料理人の男と出逢うところから始まる。
男の深い心の闇を知る度にヒロインは心を痛め、次第に惹かれていく。
心を閉ざしていた男もやがて彼女に心を開いていく。
そんな中、男が経営しているレストランに危機が訪れる。
自暴自棄な男は諦めかけるが、ヒロインが叱咤する。
そして二人はアイディアを出し合い、そのレストランは立ち直っていく。
互いの気持ちを感じながらも踏み出せない二人。
そんな二人の背中を押したのはレストランに来た家族連れの子供だった。
二人を夫婦と思った子供の一言に、二人は笑いながら素直になれたというところで物語は終わる。

物語に没頭した花純は二時間くらいかけて読んでしまっていた。
その間も高梨は黙って花純の顔を見詰めていた。
はにかんだり、真剣になったりと移り変わる彼女の顔を一喜一憂しながら見守っていた。