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美しい狼
第17章 制御不能
「お前と話すことなんて無い
 部屋から出て行け…」

心とは違う言葉が流れる

「本当に…
 本当に何も無いんですか?」

「あぁ」

「では、私は…
 今日限りでこのお屋敷から
 出て行きます………」

「ふん
 ホント、ずうずうしい召使いだな
 俺は言ったはずだ
 お前の意見など無い
 此処から出て行くことは許さない
 召使いの分際で
 主人に逆らうことは、許さない」

俺は
焦りと怒りで
訳が分からない感情のまま
夏目に詰め寄っていた

小さくて
貧弱な夏目の身体は
より身を小さくするように
ドアと俺の身体の間に挟まれて
震えている

「じゃぁ…じゃぁ私はどうすればいいの!
 貴方の側に居たいのに
 私は必要とされていない
 ならば
 出て行くしかないのに
 それも許してくれない!
 私にどうしろって言うのよ!」

夏目の心が身体が
悲鳴を上げているようだった
その声は
悲痛に満ちているのに
俺の胸は
不覚にも
期待という名の
甘い感覚にざわめいていた

「私は…本当にずうずうしい召使いです
 召使いのクセに
 貴方が
 要様が恋しいのです
 でも…辛い」

「なぜ辛い?」

俺は
夏目を力強く抱き締めた

「要様が好きだから…」

叶わない恋だから
要様には
素敵な女性がたくさんそばに居るから…

夏目は
大粒の涙を零した

「なぜ、他の女が居ると辛いんだ?」

「嫉妬してしまうからです…」

「嫉妬ね…
 他の女をどうして欲しい?」

「私の意見なんて聞かないくせに」

「言えよ、これは命令だ
 俺にどうして欲しいのか
 お前の口から、はっきり言うんだ」

「私は…
 夏目はッッ
 要様が、他の女性に見つからないように
 私だけを見てくれるように
 貴方を閉じ込めてしまいたい」

「………ふん
 お前にしては上出来だ
 でも覚悟しろよ
 お前しか見ないでやるってことは
 もう、我慢なんてしないってことだ」

「ッッ///」

「たまには、お前の言うこと聞いてやるよ」

俺は
二度と
他の女なんて欲しくない
夏目さえ
側に居てくれればいい

でも、そんなこと
簡単に教えてやらない

言葉じゃなく
身体で
教えてやるよ

泣きはらした
哀れな子羊を
俺は、骨の髄まで食い尽くす
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