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藍の果て
第1章 死の惑星


リオは水の惑星・地球を眺めながら、色んな人が思い浮かんだ。
パパやママ、お爺ちゃんやお婆ちゃん。学園の先生や友達。
愛犬のロビンや……、憧れていた学園の男の子。


「皆、あそこに居るんだね」



何度見ても飽きることのない、リオは改めて誇らしい気持ちになった。


「ねえ、ママ!み……て?!」


同じように窓を見せようと母親を呼んだ瞬間に、リオの視界が捻じ曲がるように歪んだ。
ぐにゃり、という効果音が正しいだろうか?
ピントがずれるとか、そんな感覚ではない。
誰かに後頭部を殴られた様な叩き付けられて視界が歪んだ様な状態。


体の重心が思うように動かず、まるで乱暴に扱われた玩具の様に体が前方の座椅子に叩き付けられる。


「あ……ぐっ」


地震。
地鳴りの様な耳を劈(ツンザ)く音が機内中に鳴り響く。

「きゃー!!」「何?!何が起こってるの?!!」


後ろに居たリオよりも小さな男の子が泣いている声が聞こえる。
女性の悲痛な叫び声に、助けを求める怒声。
男の子にかけよって声をかけてあげたいが、思うように体が動かない。
力が入らない。視界が赤に染まっている。
恐らく頭を切っているのだろう。
周囲の景色は地獄絵図の様に血肉で塗りつぶされる。



〝落ち着いて、下さい。ただいま、原因をツイキュウ…チュウ…オチツイテ……オチ……ガガッ、ザー……ガガガ”


機内アナウンスの女性の声もスローモーションの野太い男性の声の様に変化したかと思えば、汚いノイズ一色となる。
次にやられてしまったのは、電気だ。
何度かチリチリという音をたてただろうか……やがて、人々の不安を煽るように闇一色となる。



「いやあー!!」「死にたくないよ!助けてー!」


叫んでいるのか叫びすぎて掠れたような人々の声が響く中で、リオの体を誰かが覆った。


「……大丈夫?!リオ!」


「ママッ」


「大丈夫。大丈夫よ。もう、大丈夫。ママがついてるから……。何があっても、ママが一緒だから」

母親の声は震えていた。何度も同じ言葉を呪文の様にリオの前で囁いて、それでもやっぱり母親の震えた声でもリオは少し安堵を与えられて、その体温にしがみつく。


「ママっ、ママッ!怖いよっ、暗いの怖いよっ、ママッ」
塞き止めていた緊張感が崩壊し、リオは母親の胸の中で叫ぶように泣いた。
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