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藍の果て
第6章 契約の妻

夫はそんな様子は見せない人だったので、一夫多妻制という制度をデイジーと関わって改めて感じる。
しかし、ある意味で自分をある程度自由な範疇に置いてくれている距離感は、ユリアは気に入っていた。


月日が経っても、その関係性は殆ど変わらない。
リオも最近ではデイジーの外出の多さを気にしている様だが、ユリアは彼の身は案じても、彼の交際事情を知ろうとは思わない。


かと言って、彼を嫌いではない。
愛情は勿論あるのだ。こんな気持ちは正直、初めてだった。
もし、亡くなった彼がそんな行動に出ていれば、ユリアも嫉妬の念に身を焦がしただろう。




デイジーは、それすらも許せてしまう。
それはきっと、契約を結ぶ際に交わした絶対的な約束事のせいかもしれない。
決して二人の愛情を縛るものではない。
彼が提案したことは……。




「あいつの……リオの母親代わりになって欲しい」



デイジーはユリアに女である前に、母親としての存在を求めたからだった。




リオには両親が居ないとだけ聞いていた。
恐らくデイジーは唯一の家族として、リオに接していたのだろう。
ユリアもリオの事を可愛いと思えたし、妹のように、子供のように接してきた。





デイジーとユリアは恋人同士でも、新婚夫婦でもない。家族なのだと。




だからこそ、彼はバルトに一人出て行ってしまう様には見えなかった。














「あのガキとお前の為に、確立された地位も名誉も、奴は捨てるってのか?

お前の話す<デイジー・クルス>って男と俺の知る奴と、一致しねぇ」


「貴方が知ってるデイジーは、どんな人なの?」


「あ?話しただろうが。奴は任務には完璧だが、その分無駄な情けも躊躇いも、持ち合わせてる様子は微塵も見せた事は無ぇ。

それだけ、非常で冷酷だ」


「……そうね。全く違う人物みたい。もしかしたら、違う人なんじゃないかしら?」


「んな訳ねぇだろうが!俺が奴の事を見間違えるはずがねぇ」



しかし、やはりシルヴァの中でのデイジー・クルスへの違和感は拭える事はなかった。
何より、シルヴァ自身全く理解できなかった。
前・国王を殺して逃げたのは、女と子供と平和ボケした様な地で、暮らすことを目的としていたからなのか?
だとすれば、本気で馬鹿げてるとしか言いようがなかった。








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