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藍の果て
第8章 交渉

『リオには俺から話しておく。あんたがもし、連れて行こうという意志があるなら、俺の代わりではあるが推薦する』



あの日以来、シルヴァの頭の中ではデイジーの言葉ばかりが駆け巡っていた。


「正気か?あの野郎……」


疑問を呟いてみても、シルヴァ以外誰も居ない部屋で勿論、その答えが返ってくる訳も無い。
もし自身が連れ帰ると口にすれば、リオの命をあっさりと明け渡すつもりなのか?
あの小さな子供は少なくとも、シルヴァ自身を一番嫌悪しているというのに、どう説得するつもりだ?
俺がもし……


「っ!いや、あんなガキ一人連れ帰って、何になるってんだ。メリットなんて無ぇじゃねぇか」


気づけば、連れ帰る前提の推測ばかりが大半を占めていた。
自ら冷静な判断を失っている気がして、思い切り頭を振ってみる。



「そもそも、あのガキが俺と一緒に来るなんて、口が裂けても言うはずが無ぇ!いくら、デイジーの説得だとしても、だ」



そう。いくら信用を置けるデイジーの言葉であっても、自分とその家族を襲おうと企て実行に移そうとした男と共に行こうと決意する訳が無い。
いくら諭した所で、それは変わらない、はずだ。
分かっているが、どこかであの子供がバルトへ来る事を考えている。


コンコン……。


扉をノックする音が響くと無駄な雑念も混じった思考回路は一気に弾けた。
無機質な音に僅かに瞳を細めながら、ゆっくりと扉を開くとユリアが立っている。
温厚そうな微笑みを貼り付けたまま、リビングを指示しながら用件を伝える。


「シルヴァさんに客人よ。何度も呼んだけどお返事が無いから、家に上がって貰ったわ」



「っ!? テメェは馬鹿か!俺に用がある人間なんて、ここに居たら怪しいだろうが!」



「平気よ」




忍んで訪れているバルトの王に用件がある人物なんて、滅多に居るわけではない。
ユリアは危機感能力が疎いのか、全く問題ないという調子で断言する。
訝しげな表情を浮かべるシルヴァに気づいたのか、彼女はおどけた調子で肩を竦めて見せた。


「デイジーも居るし、リオも居る。シルヴァさんだって居るわ。ここはもう、要塞の様なものね」



クスクスと楽しそうに笑いながら、背中を向けてリビングへと向かう彼女。
危機管理能力が無い訳ではない、ユリアは本気で大丈夫と感じているのだと受け取れた。


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