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藍の果て
第9章 二部 バルト




「幸せ、か」



縁談の決まりそうな女の言葉を思い返していた。
契約の為の縁談と分かって居ながら、はっきりと言い切った女の姿は、五年前に出会ったデイジーの女にとても良く似ている気がする。



ふと何気なく窓に視線をやると、外で一人誰の稽古の相手をする訳も無く、一心不乱に剣を奮う姿が見えた。


白銀の髪が、その切っ先で切り裂く様な一振りを起こすたびに滑らかに揺れる。
一体いつから鍛錬に励んでいたのか、頬や髪から滴が放たれる。
ここ数日顔を合わせていなかったその姿に、自然と足は外へと向かっていた。




「……いつまで一人でやるつもりだ?相手してくれる奴、いねぇのかよ?」


「……シルヴァ」



呼びかけに反応して剣の動きを止めると、振り返る。
淡いブルーの瞳は凛とした涼しげな鋭さを持ち合わせ、中性的な雰囲気を漂わせる。
汗を拭う細く伸びる白い腕が額の汗を拭う仕草、その一つの動きにも妙な色気を感じてしまう。
全ては、あんな夢を見てしまったせいだ。



「納得いくまでかな。そっちこそ、戻ったら?婚約者さん、まだ居るんだよね?」


「っ! お前、どこでそれを……っ!」


「皆、噂してたよ。綺麗なお嬢さんだったって。城に居る僕が知らない訳無いじゃん」


寧ろ、何で知らないと思ったの?と問い返す顔は、眉を下げて苦笑の様な笑みを滲ませる。
五年前には、こんな無防備な表情をシルヴァに見せる事なんて無かった。
だからこそ、その口からだけは婚約者の話を振られたくなかった。



「別に、四六時中一緒に居る訳じゃねぇ。ちょっと気が向いたから来ただけだ」



「打ち合いじゃないから、見てたってつまんないと思うけど」



用意していた水を飲み終えると、再び飽きもせず鍛錬の為に剣で空気を薙ぐ。
この五年共に居て思ったことは、リオ・シャーロンはとても負けず嫌いだ。
デイジーが推薦すると口にしたものの、最初はバルトの兵士に敵うはずもなく、挑んでいっては生傷を幾つも作って打ち負かされていた。
その度にこうして、誰にも知られず一人こっそり鍛錬していたのを何度も見た。




僅か十二歳の子供は、涙を流す事も無く、その悔しさは鍛錬の汗と変えていた。
それから五年。リオも十七歳となり、毎日の個人練習もあってか、城勤めの兵士にそれなりに認められる地位とのし上がっている。

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