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藍の果て
第1章 死の惑星

ぼろ布になったワンピース。上半身は全て晒され、体を隠すのは最後の布一枚。
頼りなく守っている、その場所へと男が手を伸ばそうとした、その時だった。



ザッ――!



男の動きは時が止まったように動かなくなる。
先ほどまでリオの身体を蹂躙しようと蔑み嘲笑していた男が…錘でも付けられたように力なく前方に倒れたのと、鮮やかな赤が焼ける砂浜に舞ったのは殆ど同時だった。



「な、なっ!?だ、誰だ!!」



リオを拘束していた男が振り返ると同時に、何か線を描く仕草が見て取れ、男の顔に一文字の傷が入る。


「うっ、うわあああっ!!」


自分の顔に傷が入った衝撃に男は呆気なく尻餅をついた。
バランスを失った二人の男たちによって、傷を負わせた一つの影はリオの瞳に晒された。




肩まで伸びた髪は無造作に一つに括られ、リオとは違う黄色の肌。
ガラスの様なものがキラリと首から光り、その人物は顔を上げた。
男たちの返り血を浴びながらも、息切れ一つなく躊躇い一つなく立ち尽くす。


その黄色の肌とは不似合いな燃えるような赤い瞳で。




「白人種、か。〝バルト”の恥さらしが。失せろ。今なら、あんたを見逃す」


高くも低くもない言葉で告げられた人影は、男たちよりもまだあどけない少年。
〝カタナ”と言っていただろうか?細い剣の武器で男たちを威嚇していた。


「お、お前は……〝バルト”の……」

「失せるか?死ぬか?どっちだ?さっさとしろ」

「ひっ!!」



少年の淡白な声に大の大人は腰を奮い立たせて上げると砂浜を逃げていく。
一瞬の出来事にリオは状況把握についていけず、暫く放心していた。
そこへ、ワンピースだった布が放り投げられる。


「……、お前、どこから来た?」


「……わ、たし?」



少年の赤い視線が真っ直ぐにリオに注がれている事に気付いたが、先ほどの絶望感が蘇って来る。
護るように亡くなっていた母の姿や、最期まで見つけられなかった父の姿。
胸を掻き毟られる息苦しさと共に大粒の涙が零れる。



「ふえっ、ううっ……うああっ、ち、きゅう……、パパあっ、ママあっ」


「……異端者か……」
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