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その瞳に…
第26章 ~モノローグ4~
 抱きしめている体から感じる鼓動が、段々ゆっくりと落ち着いて来た頃、舞奈から小さな吐息が聞こえてくる。

 眼鏡が無くてもはっきりと見える距離にある、舞奈の可愛い寝顔。

 家に来た時には腫れたいた目も、今は落ち着きを戻している。

 頬についている髪を、そっと外してあげると、くすぐったかったのか、舞奈は、ん~と少し不満げな声を上げて、僕の胸に顔を寄せてきた。

 僕はつい、その可愛い仕草にクスリと笑いを零す。

 無防備な寝顔で、僕の腕の中にすっぽりと納まる小さな体。

 今日あんな事が会ったのに、今は穏やかな顔で眠っていてくれる事に僕はほっとする。

 僕はふと啓介さんの言葉を思い出す。

 『前回のがあまりトラウマになって無いのは、大河さんが夜一緒にいてくれたからだと思うので・・・』

 舞奈も僕がいるから大丈夫だと言っていた。

 けれど、僕はその言葉に胸が痛くなる。

 (何も守れていない・・・)

 2度も、しかも同じ人間に舞奈を傷つけさせてしまった。

 最後までいかなかったとしても、それでも舞奈の心と体に傷を付けてしまったことには変わらない。

 そして、自分だけしか知らないこの体に、他の男が触れただけでも虫唾が走る。

 「ん・・・」

 舞奈の少し寝苦しそうな吐息で、僕ははっとする。

 怒りのせいで、つい舞奈の下に引いていた右手をギリっと握り締めていたせいで、腕に力が篭っていた。

 僕は落ち着きを取り戻して、腕から力を抜くと、舞奈はすぅと安堵したような寝息を立て始めた。

 (渡辺とかいうあの男・・・)

 僕は渡辺の顔を思い出す。

 佐々木さんから貰ったメールには、渡辺の写真も一緒に添付されていた。
 

 
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