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その瞳に…
第29章 大人と子供
 「先生は、ほんとに色々な人と知り合いなんですね!」

 舞奈は恥ずかしさを誤魔化すかのように、大河から目をそらし、話題を変えようとする。

 けれど、そんな舞奈を見透かしているかの様に、大河はクスリを笑い、おでこに軽いキスを落とす。

 「まあ、そこそこにはね。・・・何故?」

 まさか、大河から理由を聞かれるとは思わなかった舞奈は、少しだけ胸が苦しくなる。

 こんなに子供っぽい嫉妬を、言葉にして良いのか迷ってしまう。

 きっと大河なら、笑ったりもせずに話しを聞いてくれるのだろうとは思っている。

 けれど、そんな事を考え口にしてしまう、自分の愚かさと醜さが舞奈には嫌だった。

 「舞奈?・・・ちゃんと言葉にしてくれないと、僕はわからないよ。どうしたんだい?」

 大河は責めるでもなく、優しい声音で舞奈を諭しながら、優しく頭にキスを落とす。

 舞奈は、流石に自分から言ってしまった手前、ぎゅっと手を握り、言葉にする決心をする。

 「・・・先生と出会ってから、先生の世界がとても広くて、私が凄く何も知らない、狭い世界で生きてる子供なんだなって、わかっちゃって・・・」

 舞奈は、自分が今どんな顔をしているのかわからず、大河と目を合わせる事が出来ず、下を俯いたまま話始めた。

 「そりゃ、先生はもう大人で、働いているから、私といる場所が全然違うのは解ってます。でも、今回先生や他の大人達に助けてもらってばかりで、私はなにも出来ない、ただ守ってもらってばかりの子供なのが、なんか嫌で・・・」

 舞奈はぎゅっと両手を強く握り閉める。

 はっきりと言葉にしてしまうと、高校生になれば少しだけ大人の仲間入りが出来ると思っていた舞奈は、まだ自分がこんなにも子供だった事を再確認する事になり、恥ずかしさと悔しさで頭がいっぱいになる。
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