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その瞳に…
第34章 楽しい夜
 今のやり取りを見ていた舞奈は、卒業アルバムの事などすっかり忘れ、呆気にとられた表情で大河を見つめる。

 (先生が、やり込められてる・・・)

 舞奈の前では余裕のある大人の対応をしている大河が、今はとても表情豊かで年相応、と言うか姉に勝てない弟の様に見える。

 舞奈はくいくいと大河の袖を引っ張り、老衰している大河に問いかける。

 「先生、早百合さんが苦手なんですか?」

 その言葉に、大河は少し驚きの表情をした後、なんとも複雑そうな表情を浮かべる。

 「苦手、と言うより・・・この人は昔からいつも笑っていて、何を考えているか解らないから、ある意味怖いんだよ・・・」

 大河はそれでもニコニコ微笑んでいる早百合を、見ながらため息とともに言葉を吐き出す。

 すると、早百合は笑顔は崩さずに少しだけ困った表情をした。

 「あら、そんな事ないけれど。私は今も昔も英樹の事だけを考えて、あの人が幸せになる事をしているだけよ」

 「まあ。貴女は今も昔もそれだけですよね・・・」

 早百合の言葉に、大河は苦笑しながら、もう今日は帰るのを諦めたのか、紅茶を再度口にする。

 「ああ、後、舞奈は送らなくて大丈夫です。今日は僕の家に泊まる事になってますから」

 「あら!じゃあ今日は遅くまでゆっくり話ができるのね!!」

 大河の言葉に、栄子が嬉しそうな声を上げる。

 「さっきは大河のせいでちゃんと自己紹介出来なかったわね。栄子よ、よろしく舞奈ちゃん」

 早百合とは違い、目鼻立ちがはっきりした美人の栄子に微笑まれ、舞奈は一瞬見とれてしまうが、しっかりと自分も挨拶していなかった事に気が着き、慌てて舞奈も挨拶する。

 
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