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ただそこに君がいた
第2章 いつからか


『春季…』

『ああ』

『寒い…』


雨音に、かき消されそうな小声を何とか拾う。てかなんだ、その弱そうな声は。しかも、オレの質問に答えろっつの。


『お前な…そんだけズブ濡れてりゃ、当たり前だっての。今日フツーに寒いし…。つか、こんなとこいつから居んだよ、お前?』

『ん…いつかな…いつだっけ…』


それだけ言って黙ってしまった一夏は、肩をすくめて震え出した。はァ————…っとに、仕方がねぇな。


『とにかく帰るぞ。先ずは風呂だ。話はその後、お前を泣かした犯人も教えてもらうからな!』


転がってた傘を今更さして、帰路につく。だけど凍える一夏があんまり気の毒で、チンタラ歩く気にはなれなかった。


『しっかり持てよ。急ぐからな。』


一夏に傘を持たせ、空いた方の手をとって駆けた。急いだかいあって、ものの五分でオレんちに辿り着いた。



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