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妄想シンドローム
第3章 類はなんとやら




 その部屋は杏璃の予想を遥かに超えていた。


 白い壁は一面だけ淡いブルーの壁紙が張られており、天井には金縁の小ぶりなシャンデリアがぶら下がっている。


 壁際に据えられるゆったりとしたソファーも白く、赤と青のクッションが両端に一つずつ置かれている。


 一見すると由奈らしい素晴らしくセンスのいい部屋だ。


 ただし、右側半分だけ。左目を瞑って眺めれば、文句のつけようがないだろう部屋。


 問題の左側には、所狭しと並ぶ本棚。きっちりと整頓された本の背表紙には、予想通りというか、あまり考えたくないというか――エロ本がぎっしりだ。


「好きなの持ってっていいよ」


 うふっと笑う彼女。杏璃の口許は引き攣る。


「す、すごいね……。迷っちゃうな……あははは……はぁ」


「でしょでしょ? 普段はね、ネットで買ってるんだけど。今日はちょっと市場調査をしてみよーかなーって気分になっちゃって」


「ネット! その手があったか!」


 ネット購買という手を思いつかなかった。今となっては由奈と秘密を共有出来る仲になれたのだし、いいかとは思うが、見つかったのが由奈じゃなかったらと考えるとゾッとする。







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