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妄想シンドローム
第3章 類はなんとやら




「しようとしてないんじゃなくて、作者のこだわりかもじゃん」


「そうだな。それは否定しない。その書き出しでもアリだと思う読者も多いから、風潮は消えていかないわけだし」


「ほらほらー。ねっ、そうでしょ?」


 杏璃も高校時代に友人の勧めで読んだネットサイトの小説に、そういうものがあった。名前や容姿が開いてすぐあるというのは、読む側からしたら覚えやすくて想像もしやすいというものだ。


 だから杏璃も思い描いていた文章にそういったものがあったのだ。


「でもお前が目指すのは、公募で賞を取ることだろ? 誰が審査するか知らんが、そんな素人臭がする物なんて、すぐ弾かれるだろうな」


「そう……なんだ」


 杏璃が目指すべき場所は、プロ志望の猛者たちがひしめく高みだ。つまり杏璃が買って読んでいる作家と同等とまではいかなくても、近いレベルの文章を書かなくてはならない。


「納得したか?」


「うん、まぁ……」


 杏璃よりも断然書物を読んでいる春馬が言うのだから、彼のアドバイスに従っておくべきなんだろう。


「なら次回までに数ページでもいいから書いてこい。チェックしてやるから」


「う……。が、頑張ってみる」


 力なく言った杏璃は、溜め息を零さずにはいられなかった。








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