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妄想シンドローム
第3章 類はなんとやら



 春馬が杏璃の家に到着して数分。


 杏璃は目の前で自分の書いた文章を読まれる居心地の悪さに耐えた時間でもある。


 パソコンの画面から視線を外した春馬が、眼鏡を中指で押し上げた。


 罵倒、蔑み、非難――それらを覚悟している杏璃の表情が硬くなる。


「――まぁ。思ったより悪くない」


「ふぇ?」


「初めてにしてはだが」


「う……うそぉ!? 春馬が褒めた!!」


 杏璃は飛び上がって窓際へ行き、晴れ渡る空に視線を巡らせる。


「何をしているんだ、何を」


「だって! 春馬が褒めるなんて、天変地異の前触れでしょ!? 槍……いや、隕石でも落っこちてくるんじゃないかって!!」


「ほー? そんなにけなされたかったのか。だったらお望み通り、立ち上がれなくなるまでけなしてやろう」


「あ、いえ。結構です。ほんと勘弁してください」


 杏璃はすぐさま元の位置へ戻り、正座してひれ伏す。


 腕を組んだ春馬は、よしと頷いた。


「……冒頭としては上出来だ。主人公が置かれる状況や、ヒロインとの出会い。読者に与える情報は充分だろ」


 さっきの行動は杏璃なりの照れ隠しだったが、さらに真面目に褒められるとくすぐったさにどう反応していいか解らない。







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