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溺れる恋は藁をも掴む
第4章 心の景色
親父の怒りが鎮まり、
落ち着きを取り戻した頃、

疲れきった母さんは、
俺から柊を受け取ると、
ぎゅっと柊を抱きしめて、
「ごめんね」を繰り返した。

ずっと泣いていた柊は、
やっと安心出来る場所が戻ってきて、
涙が徐々に止まってゆき、
ミルクを与えるあの人の腕の中で、
眠りにつく。


ずっと見守る俺に、
「あっくん(幼い時に母にそう呼ばれていた)
有難うとうね。
もう、大丈夫だからね」
と、頭を撫でる。


小さいながらに思った。
この弱い母さんと柊を守らないとって。


だから、出来るだけ笑ったんだ。

あの空気が怖かったから。
あの空気がとても嫌だったから。
あの空気の中に居る、
俺たち家族は‥‥‥



地獄から這い上がる術を知らず、
ただもがき、
空回りばかりしていたのだから‥‥‥
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