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溺れる恋は藁をも掴む
第4章 心の景色
我慢の糸は、
ある日プツリと切れた。

中学野球最期の試合となる、
県大会予選。

俺は四番のピッチャーというポジション。
嫌な事も多かった俺の日常で、
野球をする事が唯一の生き甲斐だった。

だけど、予選の二回戦であっさり負けて、
俺の中学野球の歴史は幕を閉じた。

あいつに言われるまでは、
悔しいけど後悔はなかった。
出来れば高校に入ったら、
甲子園を目指して、
また野球に打ち込みたかった。


試合に負けて帰った日。

しょんぼりしながらも、
笑顔を作って、負けた事を話した。

あいつも珍しく早く帰っていた。
食卓で酒を煽り、
母さん相手に会社の愚痴をこぼす。
柊はその雰囲気もすっかり慣れてしまっていて、
先に冷やし中華を母さんの横で食べていた。


「お帰り、晶。
三年間お疲れ様ね。
今日は暑かったね。
冷やし中華作ったよ。
良くやったよ。
晶の泥だらけのユニホーム、
面倒だったけど、
もう、洗えないの寂しいな」


慰めようとして、
敢えて、優しい言葉を掛ける母さんに相反して、
親父の口から出た言葉は‥‥‥
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