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大きな瞳に映るのは
第25章 勘



奏の顔を見上げると
眉間に皺を寄せたまま
固まっている。


そして数秒間の沈黙を破ったのは
彼だった。


『 … はぁ 』

呆れたように小さく溜息を吐くと
私の熱くなった身体から手を離した。


『 それならそうと、早く言ってください 』

「 … へ? 」


奏は私の言葉を信じてくれた様子で
心配したんですよ、と小さく笑った。


たしかに自分の恋人が
毎週誰かと一緒に居たなら。
それがもし異性で
仲よさ気にしていたなら。

不安にもなる。

心配にもなる。


そう改めて考えると
奏へ対して申し訳ない気持ちが
溢れ出てくる。



「 … ごめんなさい 」



嘘なの。
ごめんなさい。


遙との関係は。
誰にも話すことができないの。



心の中でひたすらに謝っていると
奏が小さく口を開いた。


『 … ま、今日は 』



いつも通りの顔に戻った奏は
私にまたがったまま身体を寄せる。

覆いかぶさるように。
そして、耳元に唇を寄せられる。

ふ、と耳元で奏の吐息が聞こえ
おもわず肩を竦める。


『 … おしおきですよ。』


ゆっくりと開かれた口元から
小さく囁く様に発せられるその声は

どこかいやらしくて。
まるでにやりと笑っているかのようで。

たったその言葉だけで
びくびくと背筋が震えたかと思えば、
奏は私から身体を離した。



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