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大きな瞳に映るのは
第12章 男と女



『 俺 木下音夢の音が聴きたい。』



その一言でなんのことだかすぐに分かった。



「 あー… でもピアノなら学校でも…

『 今、聴きたいんだけど。』




遙は私の話に割って入るのが得意なのだろうか。
今日一日だけで何度も遮られている気がする。




「 … わかった、少しだけね? 」

『 それでこそ小食系男子っ! 』



再び私をからかう遙。
遙は本当に私のことを女として見てない様だ。





ギッ ギッ



自転車に跨り、二人乗りをする。

ラーメンの匂いから一気に遙の匂いに包まれる。



そうぼんやりと思っていると、
案外早くに遙は自転車を止めた。




キキッ …




自転車を止めた先を見る。

どう見てもスタジオではない。
ただのアパートだ。



「 ハル …? えぇと … ここは? 」



理解に苦しみ戸惑いながら遙を見ると
遙は目を見開ききょとんとしている。




『 ここは? って … 俺んちだけど。』


「 … はぁ?! だってハル、スタジオって … 」



ひとまず自転車から降り遙に問う。





『 あぁ。スタジオ 兼 自宅? 』



遙はおかしそうに微笑む。

そんな話一言も聞いてない。
まったく困った話だ。




『 大丈夫だって、俺欲求不満とかそういうんじゃないから 』

「 そういう問題じゃ … 」



大胆な遙の言葉に少し恥ずかしくなる。

全く気にしない様子で遙は自宅であろう部屋の鍵を開ける。




『 じゃあ、どういう問題? 』



ガチャリと鍵を開けドアノブに手を掛けながら私の方を見る。



「 …ー 。 」



言葉が見つからず俯く。



ギィ …



遙が玄関の扉を開ける。





『 入んないの? 』




遙が振り返りながら聞いてくる。
私はどうしたらいいかわからずその場で立ち竦んだ。



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