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サイドストーリー4
第5章 数学のセンセイ
俺はいまどき、大人でスカートのポケットにハンカチを入れているその行為に
可笑しくなってくすくす笑った。
それと同時に、なんだかすごくこの人は純粋なんだって分かったんだ。
ポケットにハンカチでそんなことを思うのはおかしいかもしれないけど。
俺の知ってる女子は大きな化粧ポーチの中にハンドタオルは入っていても
制服でも私服でもスカートのポケットにハンカチはいれない。
そして、飯田センセイのハンカチは「ハンカチ」だった。
タオルじゃなくて、きちんとアイロンをかけたハンカチだった。
急にこの人が6個上のカテキョじゃなくて、可愛らしい女の子に思えた。
「ごめん。弥生ちゃんごめん」
そう言うと、同じぐらいの背丈の弥生ちゃんをギュッと抱きしめた。
「智樹!」
今日は大学帰りに弥生ちゃんとデートの約束をして待ち合わせた。
「なんかぼんやりしてたね」
「もうすぐ夏休みだな。と思って」
「その前に私は期末テスト作らなきゃ~」
「頑張れよ。センセイ」
「うん」
「俺たちのファーストキスをした日を思い出してた」
「ええ~」
あれから5年。今弥生ちゃんは俺の隣にいる。
俺の本気って意味での「ファーストキス」もきっとあれなんだと思う。
「可愛いかったな。弥生ちゃん♪」
「今は可愛いくないみたいじゃない~」
「いや。俺にとってはいつまでも最高に可愛いオンナだよ。
もう、これ以上本気にさせないでよ。弥生ちゃん」
そういってもう何千回目かのキスをする。
「私以外の誰ともキスしないで」
「もちろん」
大好きだよ。弥生ちゃん
END*****