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月の吐息
第4章 美月

トイレから脱出してくると、健二が温めの白湯を用意して待っていてくれた。

もう2時半すぎ。

酔いも覚めてきて、流石に気心知れてるとは言っても、微妙な気持ちになる。

「あのさ」

「あーあー――――・・・」

帰ろうとしたのに、健二が盛大な溜息をついてソファで頭を抱えた。

「全然かっこつかねーよな、俺。今日だって、一世一代で、お前見つけて、家に呼んで、ちゃんと告白し直そうと思ったのに、お前は酔ってるし、吐くし。それを介抱して、お湯なんて沸かしてるのに、そんな状況でもお前が好きとか、俺、マジ、しょうもないわ」

いや、そこまで言わなくても。

フォローの言葉を探してると、健二がガバッと顔を上げた。

「それでも、好きなんだ。美月」

「ちょっ・・・」

「前髪がパッツンでも、怒ったら拳が飛んでくるとしても、酔いつぶれて吐いてるとしても、そういう美月も全部ひっくるめて、誰にも渡したくない」

「ば、」

「バカだよな。分かってる! 俺はバカだから、お前が持ってる、そのマグカップにも嫉妬を感じるし、あのバーテンなんてボコボコに殴りたくて仕方ないけど、でも、犯罪はしないからさ。真面目に生きるから、俺と、一生、一緒に過ごすとか、もう1回、考えてくんねー?」



「・・・―――」



本当に直球だ。直球というか、豪速球クラスだ。



こんな健二を見たことなくて、私は健二のこと何も知らなかったんだって、初めて知る。




泣き虫ケンちゃんは、もう、大人になってる。





私も大人に、なるの?





ならなきゃ、だめ―――?





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