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第1章 はじめて

はじめては車の中だった

中学を卒業した春休みの夜先輩に呼び出され
車の中で告白された

当時好きな人がいた私は

「好きな人がいるのでごめんなさい」
と素直に言った

優しい先輩だから

「仕方ないね」
で終わるとそう思いながら

無言のままの運転席の先輩を見るとうつむいたまま
手にはナイフを持っていた

私はわけが分からず怖くて怖くて
助手席のドアに手をかけて飛び出そうとした瞬間

あっという間にシートが倒され押さえ付けられていた

泣きながら暴れて抵抗したが
あまりの力強さとナイフの恐怖心に

殺されるくらいならされてしまったほうがマシだ
とあきらめてしまった

暗い駐車場の車の中で
私の胸を荒々しく掴み
唾液を自分のそれに指で塗るようにすると
無理矢理私の中に押し込んできた

フロントガラスの外側に張り付いた小さな虫を
眺めて涙を流したまま私のはじめては
あっという間に無くなってしまった

痛くて痛くて
何度も出し入れするそれが気持ち悪くて
早く終わってと思っていた
血がでるほど唇を噛みしめて我慢していた

気が済んだのか
冷静になったのか
全部終わったあとに先輩が優しく謝ってきた

私は先輩のその激しさと優しい感じの違和感に
とてつもなく恐怖を感じ

「とにかく付き合うことはできません」
と泣きながら言って車を降りて歩いて帰った

歩いているときも
まだ何かが入っているような違和感と
ジンジンした痛みでまた涙が溢れた
それが夢ではないんだと現実なんだと
悔しくて悲しくてたまらなかった

家に帰るとシャワーで何度も身体を洗い
洗いながら何度も吐いた

どうしよう
こんなこと誰にも言えないと

眠れない夜を越えた朝

私は悲しさも怒りも
何も感じなくなっていた

あきらめなのか
自分に蓋をしてしまったのか分からないけど

好きだった男の子のことも
なんとも想わないようになってしまっていた


それからしばらく誰とも付き合うこともできなかったけど
純粋な年下の男の子を好きになって

何ヵ月も何もせずに我慢してくれる彼を
いとおしく感じ
彼となら良いと思えた

そしてはじめての彼が私のように
悪い思い出になってしまったらかわいそうだと
必死にお姉さんを演じることにした


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