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第5章 救いの手

高速を走る車の中で
私は真美に電話をする前に
連絡をしてあった知人の話をする

15歳のとき
いつものように父に怒鳴られ殴られ
家を飛び出して真夜中に年上の友達と遊んでいたとき
龍に出会った

県外ナンバーの高級車から龍が声をかけてきた

「おい!お前ら!子供つれ回しちゃだめだぞ!」

派手な男女の中にいた私はまだ幼く
龍の目には不自然にうつっていたらしい

龍と目が合うと
驚いた顔をして車から飛び降りて来た

「お前ら、こいつ殴ったのか?おい!
笑ってんなよ!」

龍があまりにも必死でみんな笑ってた

「逆!逆!パパにいじめられるから守ってんの!」

みんなが言った

「本当か?本当にそうか?」

龍が怖い目で私を真っ直ぐ見る

「はい、そうです。だから家出してます」

私が言うと
龍は携帯の番号を書いて私に渡すと去って行った

「ナンパかよ!美紗すごいのに声かけられたな
あれは危ないわ」
と茶化された

その出会いから何回目かの家出のときに
自分から龍に電話をした
地元で父に見つかり連れ戻される
繰り返しが嫌だからと
龍の地元に連れて行ってもらった

どうにでもなれと
やけになっていた

でも龍は自分のアパートに私を連れて行くと
黙って何日も居させてくれた
龍は20歳だった

「不良娘はたくさんいるけど
はじめて見たとき美紗からは
消えてなくなりそうなオーラが出てたんだ」

「それは大袈裟!」

私が笑うと

「大袈裟じゃない!俺はおかあが死ぬ前に
同じものを感じた、でも良く分かんなくてさ
いつも通り遊んでたら自殺してた
だからそういうオーラを出してる奴はほっとけねぇ」

ぶっきらぼうに言う龍に
私は何も言ってあげられなかった

私には真美以外にもう一人全てを話せる
龍という存在があった

何度か家出をしたときに
龍や周りの友達に助けてもらっていた
女友達は15歳の私に自分の保険証を持たせ
居酒屋のバイトの面接に連れて行ってくれた
私は家出のたびにその居酒屋でバイトをし
毎回一万円のバイト代を稼いでいた

「まずはお金がないと生きていけないね
貸すのは簡単だけど
美紗はお化粧すればごまかせるから
援交になんて手出すくらいならよっぽどいい」

そう言われた

私もそんなことしたくないと思っていたし
その言葉に助けられた気がした









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