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第8章 揺れる心

あっという間にリニューアルオープンから
半年が過ぎ
従業員も増え一年が過ぎる頃には
時間に余裕もできるようになった

いつの間にかまた一つ歳を重ねる


「美紗の誕生日みんなでお祝いしたいってさ」

謙さんが言った

私は謙さんと二人で充分だと思っていたけど
素直にみんなの気持ちがとても嬉しかった

夕方からバーを貸し切り
謙さんや龍や横山さんや従業員
そしてお店の女の子が集まって
私の誕生日を祝ってくれた

いつも母と二人でケーキと
母の手作りのお世辞にも美味しいと言えない
ちらし寿司を食べていた
誕生日はそんなものだと思っていた

こんなに賑やかで楽しい誕生日は
はじめてだった




みんな楽しくお酒を飲んで騒いだ
私も子供みたいにはしゃいでいた

深夜になると謙さんが

「先に女の子たち送ってすぐ戻るから」

そう言って出て行った

龍や従業員の男の子達は意気投合して
カラオケを楽しんでいた

私は

「少し外の風に当たってくるね」

と伝え屋上に上がった

屋上のベンチに腰をおろす

お酒を少し飲んだせいか
身体が熱くて夜風が心地いい

ふと母を思い出した

私の誕生日思い出してるかな…
少し胸が苦しかった


「俺も風に当たりに来ちゃった」
振り向くと横山さんが立っていた

私の横に座ると

「おめでとうな
よくがんばりました!」

と言って私の頭を撫でた

「もう!立派な大人なんだから
子供扱いしないでくださいね」

私が笑いながら言うと
横山さんが急に真面目な顔になって

「そうだな…
めちゃめちゃ女として意識しちまうもんな
謙さんのものだって分かってるけどさ…」

「あはは
酔ってる酔ってる
私はものじゃないよ!」

と笑って
横山さんの顔を覗いた瞬間
キスをされてしまった
私は驚いて何も言えなかった

「酔ってるついでにキスしちゃった」

そう言って私を抱き寄せた

「待って!待って!
だめだよやめて…」

そう言っていたけど
抵抗できなかった

病院のベットで
横山さんの言葉を聞いたときから
横山さんのことが頭から離れなくなっていた…

「俺…謙さんに殺されてもいいから
お前が欲しいよ」

そう言って
小さな箱を私の手の平にそっと置いた






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