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Dolls…
第10章 美しき獣
窓から見える景色は、故郷の景色とよく似ている。

東京に出て来てから厳しい現実にぶつかって、働いてばかりの疲れた心が洗われて行くようで

そこに懐かしさまで感じて、飽きずに何時間でも眺めていられた。

小さな窓から見えるこの景色だけが今の私の唯一の癒しだった。




すると…




「お前はいつもそうしてるな」

「あ…」



いつもの如く、振り返るとそこには椎葉さんの姿があった。

いつものように私が逃げてないかどうか見張りに来たのか…。

そして、私はいつもベッドに寝転んでぼんやり外を眺めている。



「椎葉さんは…、いつもそうやっていきなり現れますね」

「ここは俺の家なんだから当たり前だろ」

確かにそうだ。

監禁されてるとは言え、ここは椎葉さんの屋敷。

私はただのモデルだし、椎葉さんにしてみれば私に人権なんて必要ないのだろう。


「で、何か用ですか?」


あれから何時間も経ってるのに未だに椎葉さんの顔が見れない。

とことん小心者だな、私は。

椎葉さんに背中を向けたまま呟く。


「今夜は嵐になるみたいだ。それで様子を見に来た。さっきから雷も聞こえてる」

確かに、さっきから遠くの方で雷鳴が聞こえてる。

あの雷雲が今夜、この付近にやって来るみたいだけど…。

「雷は聞こえてますけど、それが何か…?」

「……可愛い気のねぇ女だな」


はぁ…と溜め息をつく椎葉さん。



まさか…。

もしかして、私が雷に怯えてると思って様子を見に来てくれたの?

今夜は天気が悪くなって嵐になるかも知れないから、怖がってると思って…?



これは私の勝手な憶測だ。

椎葉さんの本音はわからないし、私の心配なんてしてないかも知れない。


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