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Dolls…
第11章 人形の瞳は…
と、とにかく、お風呂の許可をくれたのだから早くシュウちゃんを温めてあげなきゃ。

驚いてぼんやりしてる場合じゃない。


「シュウちゃん、お風呂…」

「は?風呂?」

「だって、びしょ濡れじゃない!いつまでもそのままじゃ風邪引いちゃうから」

この屋敷に来てから約10日。

この屋敷の生活エリアぐらいなら何とか覚えられた。


食事をするダイニングとそれに隣接するかのように設計されたオープンキッチン。

玄関ホール、バスルーム。



シュウちゃんの腕を掴んでバスルームへ誘おうとしたが

「でも、いきなり来て風呂って…。ここ、人ん家だし」


やや喧嘩腰での初対面の挨拶が相当堪えたのかシュウちゃんは戸惑っている。

喧嘩しようとした相手にお風呂を薦められたのだから。

シュウちゃんの気持ちはわからなくもないが、今はとにかくこの濡れた服と体を何とかしないと。

それに、この屋敷の住人の許可は降りたのだから。



「大丈夫だよ!椎葉さんは使っていいっていてくれたんだもん!」

私と椎葉さんの関係、椎葉さんはバラさずにいてくれた。

シュウちゃんにはバレなかった。

「ほら、早く」

「ちょっ、おい…っ」






シュウちゃんの手を引きながら強引にバスルームに向かう私だが、心の中は今までにないくらい暖かだった。




椎葉さんって、私が思ってるよりも本当は人間味のある人なのかも知れない。

本当は優しい人なのかも知れない。

人形みたいに綺麗な顔だけど、たまに生気を感じられずにゾクッとすることがある。

だけど本当は…、本当は物凄く優しい人なのかも知れない。





悪魔のようだと思ってた椎葉さんの優しさを見て、私の心は安堵に満ちていた。

私に見せてくれた優しさじゃないけど、それでも何だか嬉しい。



シュウちゃんの手を引きながらも私の足取りは今にも空を飛びそうなぐらい軽やかだった。

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