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第11章 人形の瞳は…

いくら単純な私でも、シュウちゃんに本当の事は言えない。

それに、もし本当の事を打ち明けたらシュウちゃんの事だから椎葉さんを殴りかねない。


「一応お前の両親にも報告しなきゃなんねぇし…」

「そ、うだね…」




そうだった。

シュウちゃんは私の両親に頼まれてここに来たようなもんだ。

うちの両親に報告するなら迂闊なことは言えない。

だって、私は━━━━━━━━…

「あ、あの、ね…っ」




本当の事を言うんでしょ？

シュウちゃんにここから助けてもらうんでしょ？


「あ━━━━━━━」






私の心の中は葛藤が続いていた。

本当の事を言えばここから逃げ出せるのに、何故かそれを躊躇ってる。

だけど、シュウちゃんに全てを打ち明けようとすると喉が詰まったみたいに急に息苦しくなった。

ここから逃げ出せる絶好のチャンスなのに…っ。


私は、この屋敷から逃げたいんじゃないの？

椎葉さんの元から逃げたいんじゃないの…？


逃げ出せるチャンスがすぐ目の前にあると言うのに、どうして私は手を差し出せずにいるのか。

何をこんなに躊躇っているのか━━━━━━



シュウちゃんの顔を見た時から夢と現実の境目がわからなくなったみたいで

私はその狭間でウロウロしてるような気分だった。

半ば夢を見ているような感覚と錯覚。


「椿？」

「あ…」


そして、私はまだ

この奇妙な夢の中をさ迷ってる…。



━━━━━━っ！！













「し、椎葉さんは有名な人形師さんらしくて…、私はそれのアシスタントって、言うか…」

「は？アシスタント？お前が…？」


声が震える。



私、嘘を付いてる…。

ここから逃げ出したいはずなのに…。







「うん…、私もほら、一応アーティスト志望みたいなもんだから…、ここで住み込みで勉強してるって言うか…」